maxonで取り扱っているギアヘッドのメリットおよび分類
maxonのコアレスモータ群は、主にトルクよりスピードを重視した設計となっているため、トルクが物足りないと感じられるケースもありえます。そのような場合、ギアヘッドをモータに取り付けることで、コアレスの小型・軽量・高出力といったメリットを活かしつつ、高いトルクを得ることができます。ギアヘッドのバックラッシュや伝達効率といったデメリットもありますが、コンパクトかつ高いトルクが必要なときの解決策のひとつです。
例えば、ギアヘッド出力軸の回転数が約100rpmで、約2Nmの連続トルクを発生させる条件で、さまざまなモータ+ギアヘッドの組合せを比較すると、以下のようなグラフが得られます。
なお、上のグラフでは、AよりBの方が優れているように見えますが、これはギアヘッドの最大入力回転数にあわせ、ブラシレスDCモータの回転数を下げて利用しているためです。(グラフの例では、Aの最大回転数が60000rpm、Bでは18000rpmに対し、ギアヘッドの最大入力回転数は8000rpm)
AおよびBからギアヘッドを外し、モータ単体で出力(連続最大時のトルクX回転数)を比較すれば、下のグラフのようになります。
maxonで開発・生産・販売しているギアヘッドには、下表のようにさまざまなタイプがあります。一部の例外を除き、ギアヘッドの出力軸とモータの出力軸が同一線上に配置されるのが弊社ギアヘッドの特長です。なお、直交軸タイプはカタログ標準品として掲載しておりません。また、maxonのギアヘッドは、モータに接続した状態で納入しており、ギアヘッド単品での販売は行っておりません。
1.プラネタリギアヘッド
ポイント: 遊星歯車機構を1~5段組み合わせ、一桁から数千までの多様な減速比をコンパクトに実現し、高トルク出力に対応します。
A) 標準仕様・材質変更オプション | |
バージョン名称 | 概要 |
標準仕様 | 金属製の歯車 |
セラミックバージョン | 遊星歯車の軸をセラミック化し、高寿命・高トルク |
低騒音バージョン | 1段目の歯車を樹脂化し、作動音を抑制 |
プラスチックバージョン | 樹脂歯車で低価格、静粛だが強度・耐熱性は劣る |
B) 機能強化オプション | |
バージョン名称 | 概要 |
高トルクバージョン | 遊星歯車の個数や歯幅を増加し高トルクに対応 |
高ラジアル荷重バージョン(1段品のみ) | ベルト張力等のラジアル荷重を想定した軸受配置 |
ウルトラパフォーマンスバージョン | 歯車の回転軸に軸受を導入し、3段品でも効率90% |
低騒音ギアヘッド(Koax Drive) | 1段目にウォーム状の特殊歯型を採用 |
バックラッシュ低減バージョン | バネ圧により回転方向のガタを打ち消す構造 |
C) 特殊環境向け | |
バージョン名称 | 概要 |
オートクレーブ対応 | 特殊な歯車材質や潤滑剤等を適用 |
オイル・ガス掘削対応 (Heavy Duty) | 高低温や耐衝撃性等、ロバスト性を高めた構造 |
2.スパーギアヘッド
ポイント: 平歯車の歯車列からなる構造で、一桁から数千までの多様な減速比をコンパクトに実現します。低トルク向きで低価格です。
A) 標準仕様・材質変更オプション | |
バージョン名称 | 概要 |
標準仕様 | 金属製の歯車 |
プラスチックバージョン | 樹脂歯車で低価格、静粛だが強度・耐熱性は劣る |
B) 機能強化オプション | |
バージョン名称 | 概要 |
強化バージョン | 軸径を太くし高い負荷に対応 |
バックラッシュ低減バージョン | 2列の歯車列で両方向にプリロードする構造 |
3.スクリュードライブ
ポイント:
・プラネタリギアヘッドの出力軸をスクリューに変更し、リニア駆動に対応したタイプです。小さな体積で大きな推進力を得られることが特長です。
・モータからナットまで、一体化した構造のため、設計や調達、組立の手間が省けます。
・セラミック部門を持つモータメーカとして、スクリュー(ネジ)部がセラミック製の製品もラインナップしています。
A) スクリュー材質オプション | |
材質名 | 概要 |
ステンレススチール | 弊社スクリュードライブの標準材質 |
セラミック | ステンレススチールより伝達効率や推進力、寿命、 化学的な安定性が高い |
B) ネジ山形状オプション | |
材質名 | 概要 |
メートルネジ | 滑り接触。伝達効率が低く安価。セルフロックあり |
ボールネジ | 転がり接触。伝達効率、推進力高い。セルフロック無し |
台形ネジ | 滑り接触。メートルネジより高い推進力。セルフロックあり |