各種(ブラシ付きDC・ブラシレスDC)モータのメリット・デメリット
1.ブラシ付きDCモータのメリットやデメリット
ブラシ付きDCモータは、巻線を流れる電流の向きをブラシにより機械的に切り替える構造をとっています。モータを直流電源に直接つなぐだけでロータを回せるので、制御がシンプルです。また、貴金属ブラシ付きのモータを使えば、極低速域での運転も可能です。さらに、ロータ位置検出用のセンサが無くても駆動できるので、グラファイトブラシの付きのモータを使えば過酷な環境にも向きます。デメリットは、ブラシが摩耗することです。モータ寿命や最大回転数が制約を受けるほか、発塵を嫌う用途には不向きです。また、機械的な電流の切り替えに伴う電磁ノイズもデメリットです。
ブラシ付きDCモータでは、コミューテータのセグメント数(整流子片数)に応じて発生トルクが脈動します。この脈動(リップル)は、セグメント数を増やすと小さくなります。
2.ブラシレスDCモータのメリットやデメリット
ブラシレスDCモータには、ブラシがありません。寿命、最大回転数、発塵、電磁ノイズなどの面で、ブラシ付きDCモータにくらべ優位です。デメリットは、直流電源にモータを直接つなぐだけでは、ロータは回転しないことです。巻線を流れる電流の向きの切り替えを、モータの外で行う必要があるほか、ロータがどの位置に来たら電流を切り替えるかも課題となります。ホールセンサ内蔵仕様、センサレス仕様とも、ロータ位置を検出する手段の構築が必要です。さらに、ホールセンサ自体の分解能は低いので、低速域での運転には、モータ本体にエンコーダを追加取り付けする必要があります(永久磁石の磁極ペア数がnのとき、ホールセンサの分解能は6n cptとなり、安定した駆動には1000/n rpm以上が目安です)。
ブラシレスDCモータのトルクリップルは、制御次第です。
コアレス仕様のブラシレスDCモータに対し、120°通電制御(矩形波駆動)を行うと、原理上、下図のように電気角で60°ごとに発生トルクが脈動します。
一方、ベクトル制御(正弦波駆動)を用いれば、理論上、発生トルクは最大値で一定となります。両者の違いについては、こちらのコラムもあわせてご覧ください。
コア付きのブラシレスDCモータを矩形波駆動すると、発生トルクは電気角で60°ごとに脈動しますが、コギングや巻線の電気的時定数の影響も上乗せされます。このため、このモータをベクトル制御することもできますが、コアレスほどにトルクリップルを抑える効果は見込めません。
なお、「コアレス」と「コア付き」の違いについては、こちらのコラムをご覧ください。
また、「コア付き」を選定の際の注意点など詳細については、こちらのコラムをご覧ください。
(HIIT)