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ジャパンマイコンカーラリー2020 Advanced部門3位入賞 富山県立富山工業高等学校

ジャパンマイコンカーラリーとは、ロボット競技大会の一つであり、高校生が設計製作したマイクロコンピュータ(Micro computer、略してマイコン)を搭載したロボット(模型自動車)が、コースを自律制御(ロボット自ら動く方式)で走りタイムを競う競技です。地区大会の上位選手が全国大会への出場権を得て、全国大会で競います。

2020年1月に開催されたジャパンマイコンカーラリー2020のAdvanced部門で上位入賞を果たした富山県立富山工業高等学校の中村雄一先生と、選手として参加された生徒さんにお話をうかがいました。

ステアリング部1

― ジャパンマイコンカーラリー2020 Advanced部門での3位入賞おめでとうございます。
この競技大会に参加されたきっかけは何ですか

「工業高校には各学校で名称は違いますが「工学系」の部活動があります。機械科であれば機械加工をいかしたものづくりを行い競技会に参加する、建築科であればデザイン・設計を競うコンペに参加する…といった活動をしています。私も「電子機械工学部」(前任校では機械研究部)の顧問として30年近くそのような活動を指導してきました。

ジャパンマイコンカーラリーには、20年くらい前から取り組んでいますが、製作課題として、
・車体を設計・製作・・・・・・機械の分野
・制御系の設計・製作・・・・・電気・電子の分野
・プログラム・・・・・・・・・情報の分野
の3点を融合させたマイコンカーというものが、「電子機械工学部」の生徒たちが所属する学科の学習内容に非常に合致したものであったからです。」

― こういった部活動の中でご苦労された点を教えてください

「3年生の「課題研究」という授業のテーマとして作品製作に取り組む場合は、工業分野の学習も進み、技術も身についてきていますので、ある程度生徒まかせで、こちらはアドバイスするだけで、ものは出来上がってきます。

しかし部活動の生徒たち、例えば1年生はついこの間まで中学生で、機械・電気・情報の技術など持っていません。学校での3年間の学習でそういうものを身につけていくのですが、学習が済んでからこのテーマに取り組みましょうというわけにはいきません。放課後の限られた時間で、必要な技術を教え、手取り足取りということになります。現在では、毎年マイコンカーという同じテーマに取り組んでいるおかげで、1年生の指導については上級生が行ってくれていますが、軌道にのるまでは大変でした。

また、競技会ですので勝敗があります。そのことが生徒たちのモチベーションのアップにつながるのですが、年々タイムが向上しているマイコンカーラリーに対応していくためには、新しい技術や情報の収集が不可欠となります。それを吸収し身につけ、基礎実験等を行い、生徒たちにフィードバックしていくというのが、部活動の顧問側の作業となりますが、機械・電気・電子・情報の多分野に渡りますので、若いころはともかく、歳をとった現在では、頭や体がついていけないといった面でつらく感じることがあります。」

― 先生が情報収集をされているんですね。どのようにして情報は入手されているのでしょうか

わからないことは、聞くしかありません。
生徒たちはいろいろな大会に参加し、試合やピット(待機場所)で他のチームのロボットを見せてもらったり、未知の技術を指導してもらったり(相撲ロボットの場合は、会場で社会人や大学生が技術を公開してくれることもある)し、その後いろいろと、こちらに質問してきます。また設計段階では、生徒たちのほうが頭が柔らかいので、いろいろなアイデアを出してきます。

こちらの知識で対応できることもありますが、そうではないことのほうが多いです。インターネットで調べることは生徒たちにもできるのですが、もっと詳しく知りたい場合は、私のほうで、直接他校の指導者の方に質問したり、メーカーさんや商社の方に問い合わせたりします。メーカーさんに問い合わせる際は、一昔前は電話しか手段がなく、結構敷居が高かったりしたのですが、最近はホームページに「問い合わせ」という項目があり、思い立ったらメールで聞け、アドバイスをいただけるので大変助かっています。

― 部活動や大会出場で印象に残っていることは何でしょうか

「生徒たちの中で、スポーツが得意・好きな生徒は運動部で活躍していますが、私が指導する工学系の部活動に入部してくる生徒たちは、運動もそれほど得意ではなく、なんとなく「ものづくり」が好きだ、とか、なんとなく「ロボット」に興味があったという生徒たちです。
その生徒たちが、競技会に参加することで自信をもち、生き生きとした表情を見せるようになります。また内向的な子も、会場では他の競技者と積極的にコミュニケーションをとる姿も見かけほっこりさせられます。」

― 今回の大会で出場したマシンについて可能な範囲で教えてください

入賞マシンライトニング

「大会後に実行委員会のアンケートに答えたデータと同様になりますが、下記の通りです。

長さ関係 全長570mm、全幅200mm、ホイルベース170mm
重量(電池込み) 822g
電池の種類、本数 PANASONIC エネループPRO 8本
駆動系 各輪のモータの個数 各輪1個(MCR指定モータ)
ギヤ比 10:52
ホイール、スポンジの種類、作り方 自作ホイールにオプセル(LC-150粘着付き厚さ3mm)を貼り付け、養生テープを上に2巻き
タイヤの直径 34mm
ステアリングモータ RE-max 250021 1個 (田宮模型8枚ピニオンと自作ギヤで8:54に減速)
コース検出センサの種類、数 デジタル5、アナログ2
その他のセンサの種類、数 角度検出用ボリューム(ステアリング1、センサバー1)
モータコントローラ 自作(FETを用いたブリッジ回路)

特徴は、低重心ということは重視していますが、軽量ということにはあまりこだわっていません。それよりも重さの配置・バランスに気を遣っています。
駆動系の出力は使用モータ(マブチのRC-260RA18130)が指定されていることもあり(減速比によって多少の違いがあるかもしれませんが)、現在のギヤ比で調子よく走っているのでこんなもんかなという話を生徒たちともしています。
ステアリングについてですが、これも初めに作ったギヤ比が8:54で、現在まで不都合がないので変更していません(もしかするとオーバースペックかもしれませんがその辺の検証まで手が回っていません)。」

ステアリング部2

― 詳細までありがとうございます。
maxon製品をご採用いただいた理由をお聞かせいただけますか

「部活動で取り組んでいるもう1つのロボット競技の相撲ロボットで、以前より使用させていただいており、出力・レスポンスがよいことにより、自作のサーボ機構を制作する際に迷わず採用させていただきました。」

― 実際に使用されて出力・レスポンスなどはご期待にお応えできたでしょうか

「非常によいです。先ほどの質問でもお答えしたように、製作してすぐに大会出場ということの繰り返しなので、性能試験や他のモータと比較する余裕がありません。よって理由も説明できませんが、同じような性能で入手のしやすい他の製品を知りませんし(情報不足なのかもしれませんが)、他の上位チームも使用していることからもベストな選択だったのではないかと思っています。」

― ありがとうございます。入手しやすいと言っていただけると嬉しいです。マクソンの製品は、製品ひとつからでもお求めいただけますし、学校サポートキャンペーンや官学割引なども実施しております。今後もお使いいただけるよう、努めてまいりたいと思っております。

― maxonのモータに要求されることは何でしょうか

「特に思いつきません。マイコンカーで使用しているモータは、10年以上長持ちしています。反対に相撲ロボットで使用している150Wのものは、定格電圧以上で、しかも短時間で正転逆転を繰り返しているためよく焼損させます。(年中動かしているわけではありませんが)それでも2~5年はもちますので、高性能で高寿命ということになると思います。」

― maxon製品に関してご質問などございますか

「相撲ロボットで使用している150WのRE40ですが、(定格電圧以上で使用しているため問題外なのですが)焼損した場合の修理等はやっておられますか。
焼損したものを分解したことがあります。内側がカーボンで真っ黒になって焼き付いたようになっているものはどうしようもないと思いますが、ブラシへの配線(細いもの)が切れているものはこのパーツを交換すれば使えそうな気がします。」

― ブラシの交換修理や、ブラシ単体での販売はいたしておりませんので、基本的にブラシの寿命はモータの寿命ということになります。

ここからの質問は、実際に競技に参加された生徒さんにお答えいただきました。

全国大会にて

― 今大会で上位入賞されたことで、何か変わったことはありましたか

「高校入学以来いくつかのロボット競技に取り組んできましたが、初めて個人で入賞し、成績を残すことができました。このことで自信がつき、ロボット競技のみならず、いろいろなことに向き合う気持ちが高まりました。」

― 今後の目標をお聞かせください

「このあとは進学し、ロボット関係の技術者を目指し、ハード・ソフト面でもっと知識を深めていきたいと思っています。」

将来、ロボットを設計する際に、駆動はmaxonに任せていただけるよう、私たちも技術を向上させてゆきたいと思います。貴重なお話をどうも有難うございました。