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EPOS4 ー まさにマイクロ!

ロボット、分析および処理システムには、ネットワーク化された通信システムを備えたダイナミックなコントローラをコンパクトに統合させた、エネルギー効率の高い多数のドライブが必要です。「EPOS4 Micro」モータコントローラは、既に産業用ソリューションとして実績のあるEPOSシリーズがベースになっています。そのため、高い開発コストを必要とせず、CANopenまたはEtherCATを備えたモジュラー多軸システムを実現できます。

手術用ロボット

手術用ロボットは多軸システムの典型的なアプリケーションです。

要求項目:コンパクトな多軸システムの概念
特に、手術用ロボット、医療用および実験用の分析装置、放射線技術のマルチリーフコリメータは、高い効率により高密度で設置できる、より小型化されたドライブシステムが非常に重要です。maxon DCモータ、BLDCモータは、ギアヘッドや位置および速度測定用のエンコーダと組み合わせることにより、このようなアプリケーションに理想的なソリューションとなります。「ドライブパッケージ」には、モータとセンサに一体化できるような理想的なモータコントローラも含まれています。
上位マスタコントローラは、個々のドライブの動きの調整、ユーザとの情報交換(>ユーザインターフェイス)、およびデータ処理とERPソフトウェアとのネットワーキングに使用されます。アプリケーションに応じて、マスタはPLC、プログラム可能な多軸コントローラ(zub MasterMACSなど)、PC、またはマイクロコントローラベースのソリューションになります。

焦点:小型化されたモータコントローラ
モータコントローラの最も重要な機能は、高いエネルギー効率とすべてのコンポーネントを省スペースにまとめた高い電力密度です。同様に重要なのは、さまざまなセンサとアクチュエータの接続、および高速通信インターフェイスです。したがって、接続技術(接続コネクタや配線など)は、標準ソリューションの省スペースの鍵となるか、場合によってはしばしば障害になります。ハードウェアレベルで機能と接続技術の間に実用的なインターフェイスを見つける必要があります。「EPOS4 Micro」モジュールは、高度に標準化された機能、最新の制御アルゴリズム、コンパクトなパワーステージ(出力段)、CANopenまたはEtherCAT通信インターフェイスを装備しますが、サイズは切手(32 x 22 mm)と同じです。デバイスメーカは、このプラグインモジュールを自社の電子機器に統合するか、必要な軸数分統合された専用のマザーボードを作成し、デバイス専用の接続コネクタや配線および追加機能と組み合わせることができます。必要に応じて、maxonはそのような特注基板の開発のためのエンジニアリングパートナーとして携わります。「EPOS4 Micro」は、大量生産される工業用コンポーネント(市販品、汎用品)です。そのため、開発のリスクとコストが最小限に抑えられます。各マイクロモジュールには、ブラシ付きまたはブラシレスモータの駆動と制御、およびバス通信用のハードウェアとソフトウェアが全て含まれています。これにより、最もコンパクトなサイズでコストが最適化された多軸システムが可能になり、すべてのシステムコンポーネントの組み立てと配線が簡素化されます。

通信インターフェイス:システム全体とIIoTのバックボーン
個々の軸の協調運動に関するデータは、通信インターフェイスを介して各ドライブユニットとマスタコントローラ間で交換され、メンテナンスやIIoT(= Industrial Internet of Things)ベースのシステムコンセプトに関する情報が提供されます。ロボット工学およびデバイス/システム設計における一般的なフィールドバスシステムは、CANopenとEtherCATです。 EtherCATは伝送速度が速いため、複雑な多軸アプリケーションに特に利点があります。ただし、単軸として結合する場合は、追加のハードウェアと標準化された大型のRJ45コネクタが必要になるという欠点もあります。コントローラとコネクタのサイズは、ある程度の大きさの機械では問題になりませんが、小型機器やロボットでは、重要な選択基準になる可能性があります。多軸システムソリューションのために省スペースのEtherCATの統合・接続技術の開発が必須でしたが、「EPOS4 Micro EtherCAT」を選択することによりその問題は解決されました。

RJ45コネクタでの結合/3軸ボード上の結合(内部)

RJ45コネクタでの結合/3軸ボード上の結合(内部)

EtherCATを備えた「マイクロ」
EtherCAT通信では、誘導送信機(この文書では「磁気回路」)を使用して、電位差によるDC信号成分を除去し、外乱を抑制し、シグナルインテグリティを確保します。磁気回路は個別のコンポーネント、またはRJ45コネクタに統合されています。ただし、磁気回路とRJコネクタはどちらも、プリント回路基板上に多くのスペースを必要とします。個々の軸コントローラとEtherCATネットワークノードごとに統合する必要がある場合はコストが吊り上がります。ただし、共通のマザーボード上に複数のモジュラーモータコントローラを備えたアプリケーションの場合、磁気回路を介したEtherCAT接続は絶対に必要というわけではありません。個々のコントローラのEtherCATポートを容量結合(つまりコンデンサ)を介して内部で(磁気回路なしで)接続できます。このための前提条件は、EtherCAT接続間の導線(パターン)が短い(通常最大10 cm)および、個々のコントローラのロジック電源に電位差がないことです。これに対応する回路設計を行えば、多軸の「EPOS4 Micro」モジュールでこの条件を満たすことが可能です。マザーボード内で、個々の「EPOS4 Micro」モータコントローラ間は、費用対効果が高く、スペースを節約できる容量結合でEtherCAT接続できれば、磁気回路を備えたRJコネクタは外部EtherCAT接続用にのみ使用することができます。
「EPOS4 Micro EtherCAT」は、容量性の内部EtherCAT接続、および磁気回路による外部EtherCAT接続に対応しているため、「EPOS4 Micro」モジュールが挿入された非常にコンパクトな多軸マザーボードを実現でき、コストとサイズの両方を削減します。maxonは、3つの「EPOS4 Micro 24/5 EtherCAT」モジュールを備えた、90 x 56 mmの取り付け面(名刺の一般的なサイズ)という非常にコンパクトな多軸コントローラ 「EPOS4 Compact 24/5 EtherCAT 3-axes」を開発しました。この製品は、「EPOS4 Micro」を使用して多軸システムを設計する方法に最適なものになるでしょう。このコンパクトな寸法に高機能性と高出力を組み合わせた比類のない製品です。

「マイクロ」で統合が簡単
「EPOS4 Micro」を使用すると、データとコマンドはCANopenまたはEtherCAT(選択した製品タイプに応じて)を介して送信され、CiA®402プロトコル(「ドライブとモーションコントロールのデバイスプロファイル」)に準拠しています。標準化された運転モード「PPM-プロファイル位置制御モード」、「PVM-プロファイル速度制御モード」、「HM-ホーミングモード」、「CSP-サイクル同期位置制御」、「CSV-サイクル同期速度制御」、および「CST-サイクル同期トルク制御」をサポートしています。標準化されたモーションコントロールスレーブとして、「EPOS4 Micro」(およびすべてのEPOS4製品)は、さまざまなPLCメーカのシステムマネージャツールやモーションライブラリに非常に簡単に統合できます。
ミリ秒オーダーの高速で周期的なデータ交換を必要としないアプリケーションの場合、WindowsベースおよびLinuxベースのシステム環境(PCやRaspberry Piなど)を高レベルのシステムコントローラ(=マスタ)として使用することもできます。 maxonの「EPOS Command Library」は、マスタ側のソフトウェア開発を加速する特定のモーションコントロール機能ライブラリであり、PCとの通信はUSB、RS232、およびCANインターフェイスをサポートしています。

「マイクロ」でIIoTに対応
EPOS4は、マシンまたはドライブトレインのIIoT(Industrial Internet of Things)環境における最下位レベルの情報サプライヤです。 EPOS4は、通信システムを介して、要件に応じて、モータの電流とトルク、速度、位置の値、エラー状態、コントローラとモータの温度と負荷の値、センサとアクチュエータの状態などのリアルタイムデータを提供します。 さまざまなデータの高帯域幅、および高速な周期的データ交換の可能性は、プロセスと生産の監視のIIoT基盤であり、最適化された予知保全にも使用できます。

「マイクロ」でありながら多機能
「EPOS4 Micro」モジュールは、機能、操作、ソフトウェアの点で、市場で確立されているEPOS4シリーズと類似しています。統合密度が大幅に高いため、いくつかの機能と入力/出力が省略されています。ただし、コントローラの機能とパフォーマンスに関して妥協はありません。「EPOS4 Micro」は、25kHzの電流制御周波数と2.5kHzの速度/位置制御周波数を備えており、サイクルレートはEPOS4製品ラインの他のすべてのバリエーションと同様です。フィールド指向制御(FOC)、フィードフォワードおよびオブザーバー制御などの最新のコントローラの概念、デュアルループ制御など、「EPOS4 Micro」がモータおよびセンサを必要とする様々なアプリケーションに最適化された最大のモータ性能と動作精度を提供できることも意味します。モータシャフトにインクリメンタルエンコーダ、出力シャフトにSSIアブソリュートエンコーダを備えたデュアルループ制御により、固有の弾性やバックラッシュを伴うドライブトレインの場合でも、負荷側での正確な位置決めが可能になります。試運転と制御ゲインチューニングは、「EPOS Studio」ソフトウェアの様々なウィザードによって最適にサポートされています。

「マイクロ」でありながら用途が広い
「EPOS4 Micro」は、ホールセンサ、デジタルインクリメンタルエンコーダ、およびSSIアブソリュートエンコーダを備えたブラシ付きおよびブラシレスDCモータをサポートします。 モータシャフトに取付位置調整済みのSSIアブソリュートエンコーダの場合(maxon motorの組み合わせで通常行われるように)、ホールセンサなしでECモータ(BLDCモータ)の駆動・制御が可能です。
合計5つのデジタル入力、3つのデジタル出力、2つのアナログ入力(+/- 10V)、1つのアナログ出力(+/- 4V)により、リミットスイッチや原点スイッチなどの軸関連センサの接続と評価が可能です。 通信システムの代わりに、アナログ信号を介してトルクまたは回転数制御(閉ループ)を指令することもできます。

USBスティックと比較したEPOS4 Microのサイズ

USBスティックと比較したEPOS4Microのサイズ

「マイクロ」でありながらパワフル
「EPOS Micro」は、ヒートシンクや強制冷却なしで、取り付け面1cm2あたり50Wを超えるピークパフォーマンスの高電力密度を提供します。 実際には、出力段を含むコントローラの表面積がわずか32 x 22 mm(EPOS 24/5 Micro CAN)で厚さが7 mm、24Vのモータ電圧と5Aの連続電流、および10秒を超えるピーク電流は15Aで360Wとなります。 そして、これはすべて、-30°Cから45°Cの周囲温度(追加の冷却なし)で実現可能です。対応する出力電流のディレーティングにより、使用可能な周囲温度は60°Cを超えます。コントローラ出力段の温度はセンサによって監視され、モータはI2t監視によって過負荷から保護されます。

試運転中でも「マイクロ」
既存のデジタルおよびアナログ入力および出力は、自由に機能設定が可能であり、CiA®402(CoE)位置決めコントローラの多数の機能および運転モードに最適に適合します。 直感的な初期設定および試運転用ソフトウェアEPOS Studioでは、ガイド付きの初期設定ツール、スタートアップウィザードや、複雑なデュアルループ制御の場合でもすべての制御パラメータを自動で調整する、レギュレーションチューニングツールなどが使用可能です。 さらに、実際のモータ動作に関連するプロセスデータは、EPOS Studioのデータレコーダツールで記録および評価できます。 マザーボードの設計がなくても初期テストには、すぐに接続できる評価用ボードを利用できます。 包括的な範囲のアクセサリと詳細な製品ドキュメントも併せて利用できます。

EPOS Studio:レギュレーションチューニング(デュアルループ制御時)

EPOS Studio:レギュレーションチューニング(デュアルループ制御時)

製品だけではありません:システムパートナーとしてのmaxon
maxonは、サポートと多種多様なサービスにより、単なるカタログ製品以上のものを提供します。特に、1つまたは複数の「EPOS Micro」製品の統合用マザーボード設計中に、マザーボードの寸法、コネクタ関連、追加機能に関して、非常に特殊なアプリケーション要件が発生する可能性があります。マザーボードの電子設計に関する具体的な情報は、「EPOS4 Micro」の「ハードウェアリファレンス」マニュアルに記載されています。これらは、アプリケーション側のシステム開発者向けのガイドラインとしてご利用頂けます。
お客様がそのような開発のためのリソースを持っていない場合、maxonはカスタマイズされた電子基板の開発や製造などの追加サービスを提供します。ここで、maxonは製品サプライヤであるだけでなく、ドライブテクノロジーの分野で有能なエンジニアリングパートナーとしてシステムの責任も負っています。初期のプロジェクトベースの情報交換は、長期的で信頼できるパートナーシップへの道のりで、技術的および商業的に最適化されたソリューションを見つけるための基礎です。言い換えれば、「EPOS4 Micro」とmaxonサービスを、成功への道のりで有能で目標指向のパートナーとして信頼してください。

Written by Juergen Wagenbach(maxon motor ag)

maxonのコントローラ製品群についてはこちらもご覧ください。
コントローラのマニュアル一覧はこちらをご覧ください。