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The selection of high-precision microdrives

12.特殊な要求条件(1)

特別の環境条件や要求がある場合、標準的な製品の範囲を超えたカスタム仕様の解決策が、しばしば求められます。コスト上の理由から、変更内容はできるだけ標準からかけ離れないようにします。本当に必要な変更内容を詳細に調査することは努力に値します。
本章では、様々な境界条件によって生まれる特別の課題に取組み、保証の限りではないが可能性のある解決策を提示します。

12.1 低い外気温
低い外気温とは、ドライブの構成要素の基準スペック以下の範囲を意味し、一般的には-20°C以下です。そのような極端な要求条件は通常、自動車や航空分野の用途で見られますが、宇宙(下記参照)分野や、極低温の工場やアウトドア用途でも時々見られます。非常に低い外気温によって主に影響を受ける部品を下記にリストアップします。

潤滑剤
従来型の潤滑剤は低温では極度に粘性が高くなり、ギアユニット、ベアリング、貴金属ブラシの適正な潤滑を実現する上で不適当になります。その結果、摩擦損失は増大し、ドライブの製品サービス寿命は大きく低下します。
既に、ボールベアリングやギアユニットに使用される潤滑グリス内のオイルは比較的高い粘性のものを使用しています。粘性は低温で劇的に増加し、摩擦を顕著に高めます。これは、モータの消費電流の形で現れます。ボールベアリングでは、潤滑グリスはインナーレースとアウターレースを互いに潤滑します。潤滑グリスが機能しなくなると、インナーレースは軸を削り始めます。焼結スリーブベアリングでは、流体力学的な潤滑フィルムが不適切な形で形成され、ベアリングはキーキー異音を発生します。

ケーブル絶縁材
-20°C以下では、従来型のPVCケーブルの絶縁材は固く、損傷しやすく、また曲げにくくなります。ひび割れや他の損傷は、ショートの原因につながります。

マグネット
永久磁石の磁束は低温で増加します。モータはより強力になり、また別のメリットとして、放熱がより容易になる点があります。7.2章で説明したように、これは最大連続トルクを増加させます。場合によっては、用途によってはモータサイズはより小型になります。
フェライトマグネットは、通常とは異なる温度応答を示します。磁力は温度の低下に伴い低下するため、マグネットは、低動作温度、低保存温度で自然発生的かつ不可逆的に非磁性化し、モータは永久に弱くなります。

電気部品
ホールセンサのような電気部品の動作範囲は通常、-40°Cまで伸びており、ほとんどの低温用途で十分です。
非常に低い温度では、半導体内部の電子構造は凍結の可能性があります。熱的に励起されるキャリアはほとんど存在せず、部品はもはや適正に機能しません。

推奨
-20°C以下の温度では通常、次のルールに基づく特殊な設計が要求されます。
― モータ 方式  フェライトマグネット付モータを使用しない(例マクソン F モータ)
― 整流  貴金属ではなくグラファイトブラシ付DCモータまたはブラシレスモータ
― 軸受  焼結スリーブベアリングではなく特殊潤滑剤付ボールベアリングを使用
― ギアユニット 特殊な低温度用潤滑剤を使用
― ケーブル絶縁  PVCではなくテフロンの特殊ケーブルを使用

12.2 高い外気温
ここで、高い外気温とは、規定の最大外気温以上の範囲を意味します。モータやギアユニットにとって、温度は通常100°C以上、エンコーダでは70-100°C、コントローラでは45°C以上です。
ドライブの構成要素の動作温度はなお、より高い値であることを忘れてはいけません。放熱を発生させるには、ヒートシンク、例えば大気中までの温度勾配が必要です。
温度上昇の結果、誘発されるプロセスや反応は下記の表のとおりです。これらは温度上昇とともに徐々に発生し、常に考慮しなければなりません。

潤滑剤
潤滑グリスとオイルは高温では粘度が下がり、通常の特性を保てず使用不可能な状態になる可能性があります。これは貴金属ブラシ、ベアリング、ギアヘッドの潤滑剤に当てはまります。これらの条件の結果、製品サービス寿命は短くなります。

放熱の減少
高い外気温では、放熱は悪化します。モータの最大連続電流(および最大連続トルク)は減少し、(7章参照)、巻線はより早く過熱します。最大許容巻線温度Tmaxを超えると、巻線は変形の可能性があり、モータは動かなくなります。 マクソンモータでは、モータ 方式、巻線固定、絶縁線材の熱抵抗に応じて、Tmaxは、85°C, 100°C, 125°C または155°Cとなります。

プラスチックの不可逆的な変形
プラスチックのガラス遷移温度、通常100°C以上で、熱可塑性プラスチックはクリープ現象を起こし、接着剤と電気的な絶縁が機能しなくなり始めます。

永久磁石の可逆な損失
基本的な磁性モーメントの温度励起により、永久磁石は高温で弱くなります。モータは同じ消費電流で、より少ないトルクしか発生しなくなります。マグネット構造が変化せず拡散が始まらない限り、これらの損失は可逆、つまり冷却されると本来の強度を回復します。
通常、不可逆の損失は最大許容巻線温度を超える場合などのように、モータの温度定格値よりずっと高い温度でのみ発生します。

マグネット材料 損失 損失 マクソンモータ・タイプ
 in % / K  100°Cで加熱された場合
 AlNiCo  0.01  1%  A-max, A
 NdFeB  0.1 … 0.13  10 … 13%  RE, RE-max, 全ECモータ
 Ferrit  約0.2  約20%  F

表12.1:様々なマグネット材料の可逆損失の大きさ

電気部品
モータ内の電気部品は一般的には、温度150°Cまで規定されています。エンコーダは最大限界温度(80°C)の影響を受けやすいですが、モータ内損失に起因してさらに完全温度上昇してしまうことは稀です。

推奨
非常に高い温度では通常、次のルールに基づく特殊な設計が要求されます。
― 特に高温向けの潤滑材を備えた軸受とギアヘッドの使用。
― 電源装置の選定時に、放熱の現象(7.2章参照)と磁界強度の低下を考慮。
― モータ・タイプ : 貴金属ではなくグラファイトブラシ付DCモータまたはブラシレスモータを使用。高い最大巻線温度のため。
― テープ接着ではなく特殊ガラス繊維接着による巻線の使用。
滅菌型モータを使用する場合、高温耐久性のエナメル線材の巻線の使用を検討。
― プラスチック、絶縁材、接着剤は個別に検討が必要。
高いガラス遷移温度を持つ特殊材料と接着剤を使用。
― コントローラは仕様温度をわずかに超えた温度では動作可能、ただし性能は低下。