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The selection of high-precision microdrives

9.ステップ7:コントローラとフィードバックセンサの選定(4)

9.4 追加のコントローラ性能
モータ・タイプ(DC, EC)
検討すべきコントローラはモータ(DCまたはECモータ)の方式に適合しなければなりません。ECモータの使用時、コントローラはまた電気的な整流の役割も想定します。これによってモータには、正しいフィードバック信号、つまり、矩形波整流の場合はホールセンサ付かホールセンサなし、正弦波整流の場合はホールセンサとエンコーダが必要になります。

特別の性能と動作モード
コントローラのこれら基本的な要求条件以外にも、用途によっては 特別の性能と動作モードが効果的です。これらは、一般によく見られる単純でコストパフォーマンスの良いドライブであり、適切な制御法を実行する上での複雑作業を減少させるのに役立ちます。

例えば
― 調整可能な加減速度による回転数制御
― 単純デジタルコマンドを用いて呼び出す複数の固定回転数と位置
― 回転方向の逆転と1-Qアンプでの動的ブレーキング
位置制御コントローラのような高レベル動作システムにはまた、ユーザの使い勝手を改善するような性能追加があります。
― モータ電流値および回転数のモニタ出力(設置中の最適パラメータを見出す上で有効)
― 最適なPID制御パラメータを見出すオートチューニング(9.5章参照)
― ステータス表示出力(レディ、エラー)
― 保持ブレーキ用の起動用電圧出力
― ドライブに使用されている各種センサ入力: リミットスイッチとリファレンススイッチ
― 外部温度センサ
― 特別の動作モード:Master-encoder mode(電気的ギア)、Step-direction mode(パルス入力)
― フィードフォワード(9.5章参照)
― モータ温度の監視

9.5 コントローラ性能の追加情報
PIDコントローラの設定
PIDコントローラは、比例コントローラ、積分コントローラ、微分コントローラを組み合わせたものです。これは、偏差を減少させるための適正なモータ応答を発生させるため、エラー信号e(図 9.5参照)をどのように増幅するかを決定します。
スピードコントローラを使用する場合、単純なPIアルゴリズムを備えたクローズド・ループコントローラ回路が、通常使用されます。位置決めシステムでは、微分処理も必要です。3つの制御部はそれぞれ互いに影響しあい、相互作用が協調的に働くことは、位置決めシステムを微調整する上で特に重要です。システムを最適化するためには、係数KPKI およびKDを、指定される動作と負荷慣性モーメントに応じて設定しなければなりません。(文献:www.feinmess.de/mt_all/glossar.htm)

図 9.4: PIDコントローラ

図 9.4:PIDコントローラ
a) 位置またはスピードコントローラの代表例模式図 エラー信号e増幅器としてPID装備
b) P、PIおよびPIDが実行される時の設定値変化へのシステム応答

P, 比例コントローラ: エラー信号e (実測値と設定値との差)はユーザ指定の係数KP によって乗算され、新たな電流コマンドとして送信されます。乗算されたKP 値はエラー補正を加速します。
KP が高過ぎる場合、顕著なオーバーシューティングが発生します。KP 値が比較的高い場合でさえ、システムは発振し始め、システムの減衰機能が不十分だと、システム不安定となります。
KP値はエラーe を完全に除去することはできません。比例関係になる補正値(KPe)が、エラーe の減少量より小さいためです。その結果、残留エラー値は、単に動作維持のために高い電流を必要とするシステムにとって特に重要となります(例えば、摩擦が非常に大きいなど)

I, 積分コントローラ: ここでは、より長い周期にわたって積算され、ユーザ指定の係数KI によって乗算され、新たな電流コマンドに加算されます。この方法も過去のエラーを判断するため、エラー値がゼロに近づくのにつれて電流コマンド値もゼロに近づく必要はありません。しかし、この方法は残留エラーを除去します。
この方法には固有のデメリットがあります。係数KI は、制御回路全体を不安定化させるのです。過去のエラーが遅延効果を受けているため、適正な減衰を受けず、高いKI 値がシステムに顕著な発振を発生させる可能性があるのです。

D, 微分コントローラ:Dコントローラは、ユーザ指定の係数KDで乗算され、電流コマンドに加算されるエラーの変化とみなされます。設定値の急変のような急峻なエラーはこの方法で非常に短時間に修正できます。
適正に設定することで、この制御方式は制御安定性を改善することができます。これは電気的な減衰方式の一つとみなすことができます。KD値が増加することによって、システムはより安定しますが、定数ゼロの微分値として一定量の残留エラーが発生します。

フィードフォワード
PIDアルゴリズムでは、エラー発生時にのみ補正信号が発生します。これは位置決めシステムでは位置追従エラーが常に存在する - 実際には、常に存在しなければならない -ことを意味します。フィードフォワード制御の目的は、未来のシステムの挙動を予測し、前もって制御回路に予測エラーを伝達することによって、次のエラーを最小化します。
通常、この目的のための補正変数は2つあり、これらは、特定の用途と動作の役割のために決定されなければなりません。

― 回転数フィードフォワードゲイン: 要求回転数で乗算され回転数に比例する摩擦を補償します。
― 加速フィードフォワード補正: 慣性モーメントに関し、その加速のために充分な電流を提供します。

これらの機能を導入することによって、加減速時の平均追従エラーを減少させます。フィードフォワード制御とPIDを併用することによって、PIDコントローラはフィードフォワード後に残っている残留エラーだけを減少させればよく、その結果、システムの応答性が改善されます。

図 9.5: フィードフォワード制御の模式図

図 9.5:フィードフォワード制御の模式図
フィードフォワード値は要求される加速と回転数から算出します。
いずれの値もPID電流コマンド値に追加されます。