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The selection of high-precision microdrives

1.マイクロドライブの概要(2)

1.2 オープン・ループとクローズド・ループ制御
ホストが発行した動作コマンドは、ドライブ構成要素間で、要求された動作に正しく変換しなければなりません。コントローラのアンプ部を実装したアクチュエータとみなされ、入力変数(設定値)を出力変数(制御出力)に変換します。制御はオープン・ループとクローズド・ループの2種類の方法で実行されます。

オープン・ループ制御システム
オープン・ループ制御システムはアクチュエータの応答性がわかっている場合効果的です。出力は、既知の境界条件下での入力変数から算出されます。ですから、必要なのは、少なくとも既定の限界精度内で要求されたシステム応答できるように、正しい入力変数を見つけ出すことです。

図1.3:オープン・ループ制御システム

 

 

図1.3:オープン・ループ制御システム

オープン・ループ制御システムでは、出力変数が監視されないため、システムは多かれ少なかれ妨害や境界条件の変動の影響を必ず受けます。特定の用途では、動作中に発生する偏差が許容できるか否かが鍵となります。

図1.4:オープン・ループ制御システムの一例
図1.4:オープン・ループ制御システムの一例として、定電圧電源UMot 駆動のDCモータがあります。回転数は、UMotにおける回転数トルク特性値にしたがって、要求トルクが決まります。負荷トルクMLは、例えば摩擦変動の結果として、負荷時回転数nLの変動となって現れます。

オープン・ループ回転数制御の代表例は、定電圧のみで駆動(調整なし)するDCモータです。(図1.4)別の一例は、アンプ入力パルスがモータの固定回転角のステップに変換されるステッピングモータです。シンプルに位置決めする廉価な方法ですが、要求ステップを確実に実行できる信頼性が必要です。しかし、この必要条件は、高速時、高加速時、また、負荷の慣性質量が大きい場合には、実現が困難です。

クローズド・ループ制御システム(フィードバック)
オープン・ループスピード制御の主なデメリットは出力変数の検証ができないことですが、クローズド・ループ制御システムでは検証できます。出力変数はフィードバックされ、設定値と連続的に比較され、偏差は修正されます。妨害の影響はクローズド・ループ制御システムでは除去されます。クローズド・ループ制御システムは、通常、制御変数を計測するためのセンサを必要とするため、より複雑で高価なシステムになりますが、オープン・ループ制御システムに比べ、正確で、信頼性があり、外乱の影響を受けにくくなります。クローズド・ループ制御システムでは、制御システム自体が安定であったとしても、コントローラの設計に問題があると不安定になる場合があります。例えば、制御回路に位相シフトが起こるとフィードバックが正でかかります。その場合、制御エラーは減少されるべきところ、増加されてしまいます。
図1.5:クローズド・ループ制御回路

 

 

図1.5:クローズド・ループ制御回路

車両の操舵システムは、クローズド・ループ制御システムの一例です。道路上での車両の位置は連続的に、運転者の目によって監視されます。もし、車両が道路の片側に寄っていけば、運転者は車両を操舵し、中央に戻します。つまり、設定値(道路の中央)からの偏差が修正されます。車両がなぜ車線の中央にとどまっていなかったか(例えば、車輪の整備不良、道路の蛇行や段差、カーブなど)とは関連性がありません。

1.3 制御変数
通常の動作制御では、調整パラメータは、力、トルク、速度、そして位置です。これらに対応するよう、電流、回転数、位置コントローラが構成されます。異なる制御方式や動作モード間で切り替えられることもよくあります。

力/トルクの制御
これはクローズド・ループ制御システムにおける、ドライブの主な機能です。これはより高度のスピード制御、位置制御を構成する上で基本となります。力とトルクは、質量のある物体を動作させ、減速し、ブレーキをかけ、摩擦に打ち勝つために必要です。強い重力に打ち勝って、作業を実行し、負荷を持ち上げ、保持し、重力で下降しようとする動きを減速させなければなりません。トルク制御では、物体は動かさず、決められた張力を制御するケースもあります。

モータで発生したトルクは、モータ電流に対し線形となります。ですから、力やトルクを効率的に制御することは、モータ電流を調整、制御することが必要です。

速度/回転数の制御
スピードコントローラは回転数の計測値を要求値に一致させようとします。物体を既定の速度で回転させたり動かしたりするには、対応するスピードまでが加速してから、その速度に対応した力をかけます。これを実現するため、モータは必要なトルクを発生しなければなりません。そこで、スピードコントローラは下位層の電流制御システムにコマンドを送ります。(図1.6の位置コントローラと同様)

位置の想定と保持
物体に最終位置まで動かすため、物体を、まず(加速して)動作させ、動かし、減速する必要があります。最終的に、決められた位置は外乱があっても維持しなければなりません。これらの動作には、上位層の位置制御システムの要求に対応できるモータトルクが必要です。最終的に、ここでも電流制御ループが機能します。

図1.6:図 下位置の電流制御システムを持つクローズド・ループ位置制御システム図1.6:図 下位置の電流制御システムを持つクローズド・ループ位置制御システム

パスジェネレータは入力された動作コマンドを処理し、パスの中間位置を算出し、最終位置に到達させます。これらの設定値は定期的に位置コントローラを送信され、実測値と比較し、電流コントローラの設定値を決定します。最後に出力段を経て、モータの電流を制御し、ドライブを機械的に反応させます。