4.ステップ2:負荷の動作(8)
4.6 重要なデータの決定
負荷データを正しく理解するために、負荷インターバルそれぞれの中で、極限の動作ポイント(最大回転数、最大トルク)を決定しなければなりません。これは、各負荷インターバル jに関連する変数をリストを元にすれば可能です。
― インターバル持続時間 | Δtj |
― 速度変化 | Δvj |
― 最大速度 | vmax,j |
― 有効慣性モーメント | mj |
― 搬送力、摩擦力、重力 | FR,j |
― 加速力 | |
― 発生する最大出力 | Fmax,j=FR,j+Fa,j |
一般に、最大速度、最大力を伴う極限動作ポイントは、動作周期のインターバルの一つで発生し、最も一般的なのは加速プロセスの最後の部分です。定加速を想定すると、このインターバルの全持続時間に対してこの力が発生します。このピーク負荷で短時間の過負荷動作が可能なのは、モータ、ギアヘッド、コントローラがこの時間内に要求トルクとピーク電流を許容できる場合だけです。
次に重要な値は、停止時間を含む負荷周期の合計時間ttotにわたる、実効負荷に対応した熱負荷です。実効負荷(rms値)は各インターバル時間の力により下記式にて算出されます。
ドライブの特性
力とトルクの相対的な大きさに基づき、負荷の特徴は下記のようになります:
― 搬送、摩擦またはプリロード力が決定する負荷: この場合、摩擦や反対方向の力(例えば重力)に打ち勝つために適用される力は、加速力よりずっと大きくなります。重要なデータとしては、これは実効負荷(rms)に対しあまり高くなく(20%以下)、短時間だけ適用される最大力として表されます。説明を単純化するため、ドライブは、実効負荷だけを想定して設計することもできます。わずかに大きいピーク負荷は一般に、何の問題もなく扱われます。
― 加速が決定する負荷: この場合、最大出力は(単数または複数の要因によって)実効負荷よりかなり大きくなります。ドライブは、まず、これらのピーク負荷を考慮して設計しなければなりません。これらのケースでは、平均温度負荷の必要条件は、概して、特別な検討をしなくても満足されます。
― これらの2カテゴリーの間には負荷条件があり、選定にあたって重要な全データを十分検討しなければなりません。
加速と摩擦力を評価する上で忘れてはならないことは、この時点では、ドライブのトレーン設計から追加の損失と慣性がまだ、考慮されていない点です。
4.7 慣性モーメントの計算
任意の形状の物体の慣性モーメントは、その物体の質量全体を統合することで得られます。慣性モーメントは、常に回転軸Xを指標にして表記されなければなりません。これは、この軸から各質量要素までの距離rの二乗を積分することによって算出されます。
慣性モーメントを素早く計算する手法は、いくつかあります。
― 上記の関係に基づく方法: 物体は2つの部分miに分割することができ、個々の慣性モーメントJiを加算することによって、全慣性モーメントJtotを算出することができます。
― 各質量要素miが、回転軸からの距離の二乗で慣性モーメントに寄与することに留意することは重要です。回転軸から遠い質量要素は、回転軸から近い質量要素よりもずっと大きな影響を与えます。回転軸から近い要素の影響度は、より単純化された形状を想定し一括して算出することによって、検討することができます。
― 多くの単純形状を想定した計算式は既に存在しており、重心(表 4.4)を通る対称軸(主軸)に関して、慣性モーメントJSを算出することができます。シュタイナーの定理は、これらの軸の一つと平行な距離aにある軸Pに対して利用することができます。
JP = Js + m ・a2
なお、ここでmは物体の全質量です。