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The selection of high-precision microdrives

9.ステップ7:コントローラとフィードバックセンサの選定(1)

本章では、制御回路の構成を詳細に検討し、適切な部品(コントローラとフィードバックセンサ)を最終選定します。予備選定は既にステップ1の状況分析で実施済みです。

図 9.1: 適切なコントローラとセンサはステップ7の選定プロセスで決定
図 9.1: 適切なコントローラとセンサはステップ7の選定プロセスで決定されます。

コントローラ選定の判断基準
動作コントローラは高レベルのドライブシステムの中心的な構成要素です。そこには全ての情報が集まるため、コントローラは様々な要求を満足しなければなりません。

― 妥当な時間内に十分な精度で制御変数を制御する能力
― フィードバックセンサが提供する情報を処理する能力
― 設定値や高レベルシステムからのコマンドの解釈
― 要求される電源の供給
― モータ・タイプ(DCモータまたはブラシレスモータ)の対応

9.1 制御変数とフィードバックセンサ
コントローラとセンサは、制御変数とシステム精度の選定でほぼ決まります。制御変数(電流制御、回転数制御、位置制御)はどれが可能なのか?その制御のためにフィードバックセンサの信号は何が入力可能なのか?表9.2は、マクソンコントローラ製品群の概要を示します。

電流制御
電流制御はモータにおいてはトルク制御と同等です。十分な摩擦と静力学的な負荷がない場合、電流コントローラは、暴走状態になるまでモータを連続加速する傾向があります。上位システムからのコマンド信号、システム固有の摩擦が充分高い、機械的な停止、電圧限界などによって回避されない限り、連続加速は発生します。通常回転数制御と位置制御においても、動的な応答が確実にできるように、高速の電流制御回路を含んでいます。電流コントローラは、出力段の低インピーダンス抵抗回路を用い、出力段の電流値を直接測定しているため、別のセンサを必要としません。多くのマクソンコントローラは電流制御モードのみで動作することもできます。

回転数制御
回転数制御では、回転数の評価用にDCタコ、エンコーダ、リゾルバ等の多様なフィードバックセンサからの信号を利用することができます(表9.1および9.2)。
単純な用途ではモータ自身からの信号、例えばIxR補償やブラシレスモータの場合、ホールセンサ出力なども使用されます。要求されるセンサの分解能は、本章の次の項で説明します。制御の種類(制御象限)としては、1-,2-および4-クアドラント(象限)があります(表9.3参照)。1-Q制御はブラシレス(EC)モータをドライブする単純な用途で使用され、応答はあまり動的ではありません。応答性の高いサーボアンプは4-Qコントローラです。2-Qコントローラは動的制御の観点から、1-Qと4-Qの間に位置づけられます。いくつかのコントローラでは、オープン・ループ(つまりスピードフィードバックのない制御)コントローラとして使用できます。設定値によって調節された入力電圧が単純にモータに供給されます。これはECモータの駆動回路として用いられる時にはよくあるケースです。その実例は、駆動回路が内蔵されたECモータ(2-ワイヤモータ)です。

位置制御
位置制御は4-Q制御コントローラでなければなりません。その理由は、両方向の加速減速を制御する必要があるからです。これは動的な動作や目標位置の保持には必須です。
マクソン位置制御コントローラは、位置フィードバックとしてデジタルインクリメンタルエンコーダからの信号を必要とします。エンコーダのパルスカウントが高いほど、理論的な分解能は高くなります。マクソン位置制御コントローラはデジタル通信と信号処理が可能です。そのため、これらはバスシステムに接続し、PLCまたはPCで制御することができます。

9.2 通信、設定値、データ処理
ドライブのローカル接続点で、コントローラは上位システムのコマンド信号を解釈し、ローカルセンサには応答してそのコマンド信号を適正に処理し、上位システムにフィードバックすることができなければなりません。
システムの方式は基本的に2種類、アナログコントローラとデジタルコントローラです。

アナログ設定値と信号処理
アナログ制御は比較的単純であり、回転数制御用または電流制御用の従来型のシステムではよく見られます。コマンド信号(一般に電圧設定値)が入力され、受動要素と動作アンプからなる電気回路でアナログ電圧の形で処理されます。ここで留意すべき重要事項は、全ての信号は電圧値の形で中継しなければならず、また、様々な信号の範囲、例えば設定値やフィードバック信号の形式が一致していなければならない点です。例えば、エンコーダのパルス周波数は最初にコントローラ内でアナログ電圧に変換され、必要に応じて増幅されます。電圧はポテンショメータnmax(最大許容回転数)によって校正され、回転数範囲の設定に利用されます。その用途でのコマンド電圧は、必ずコントローラの設定値範囲内になければなりません。よく利用されるコマンド信号の範囲は-10 … +10 VDCおよび 0 … 5 VDCです。
アナログコントローラは数kHzの高いバンド幅を持ちます。出力値はフィードバック設定値への変化に非常に高速で応答します。デメリットとしては、温度変化や遅延による電圧ドリフトの可能性、パラメータ(制御パラメータ(ゲイン)や電流制限値など)を個々のポテンショメータで調節が必要などがあります。

デジタルコマンドと信号処理
より最新式の高品質回転数制御とほとんどの位置制御コントローラはデジタルで動きます。ここで、入力信号は、デジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)経由で新たな出力値に変換されます。デジタルコントローラは、適正に機能させるためファームウェアと呼ばれるローカルな動作命令セットを要求します。制御機能だけでなく、ファームウェアはブラシレスモータの電気的整流のような新たな役割を実行するためにも使うことができます。
理論的には、デジタルコントローラはパス経由でデジタル信号コマンドを受信します。コマンド入力構造は、コントローラが通信できるよう、デバイスプロトコルを参照としたフォーマット通りに伝達されます。使用するバスシステムと密接に結びつくことの多いこのようなシステムでは、共通のプロトコルはメリットが多く見られます。マクソンは大型ドライブ用プラットフォームであるCANopenプロトコルのユーザです。マイクロドライブのメーカの中には、まだ独自のコマンドプロトコルを使用しているところがあります。
比較的シンプルなデジタルコントローラは、アナログコマンド信号と設定パラメータも使用するため、アナログコントローラと同様の動作も可能です(上記参照)。入力信号はDSP処理のために、最初にデジタル化が必要です。電圧範囲とアナログ-デジタルコンバーターの分解能の検討も必要です。
今日のDSPの処理能力は非常に高いため、ドライブシステムの帯域幅の制限は必須ではありません。デジタルコントローラは温度ドリフトの影響を受けず、多数の製品は全く同じように構成することができ、一台ごとに特別の役割を果たすようリプログラムすることさえできます。ポテンショメータによる面倒な較正作業も不要です。
デジタルコントローラのパラメータはフォーマットと範囲で定義されます。これらが性能と限界値を決定づけることができます。例えばマクソンEPOS位置制御コントローラは、モータ最大回転数25,000 rpm(ホールセンサ・フィードバック時は100,000 rpm)、回転数(rpm)は整数でのみ処理が可能です。

9.3 出力
コントローラは、要求される電力の構成部分、つまり電圧と電流を伝達する能力がなければなりません。

電圧
電源は供給電圧VCCでコントローラを動作させられること、つまり、VCCがコントローラの規定の供給電圧範囲の中になければならないことは非常に重要です。もし、供給電圧が低すぎた場合、電気部品は適正に機能しません。もし、供給電圧が高すぎた場合、電気部品は破壊するかもしれません。 電源は、残留リップルを含んでも最大定格値を超えないように定電圧を供給する必要があります。
コントローラは要求されるモータ電圧UMotを出力する能力がなければなりません。モータ電圧は、電圧の一部が出力段で失われるため、電源電圧より通常低くなります(UMot < VCC)。このような電圧降下は一般的には5-10%であり、ステップ6の巻線の選定で既に十分検討されています。

電流
電流8.3章で計算したように、コントローラには要求電流を供給する能力が必須です。したがって、コントローラは、充分な連続電流能力と必要な最大電流能力を持っていなければなりません。最大電流の重要な側面は時間、つまり、過負荷状況をどれだけ長く維持できるかにあります。過負荷能力はコントローラによってそれぞれ異なります。詳細はカタログ・データシートや動作説明書を参照してください。ほとんどの場合、コントローラ内の最大電流は持続時間の限界が1秒以内です。これは、過負荷動作を計算する場合、検討しなければなりません。コントローラとモータは、最大電流と持続時間を制限することにより、温度的な過負荷から保護することができます。
この保護機能の実装を可能にするのは、

― モータを保護するため、連続電流限界と最大電流限界を設定する能力
― 場合によっては温度履歴も検討
― コントローラ温度の監視
― 時間軸上の各ステップの最大電流を制限 : 持続時間が長いほど、電流は少ない
― 最大電力損失の十分な検討: 超過時間とI2 との調和