8.ステップ6:巻線の選定(2)
8.2 巻線の選定
巻線選定の主な目的は、与えられた電圧で負荷のかかる全ての動作点をカバーする、適正な回転数-トルク特性直線を持つモータを見出すことです。目的をさらに特定すると、動作点の極限値に到達することです。回転数-トルク直線は、入手可能な最大電圧でこの動作点より上になくてはなりません。他の動作点は全て、モータ電圧を下げることで到達することができます。
図 8.4:回転数-トルク直線と動作点
青:極限動作点を含むモータの規定の電圧での動作点全てをカバーする回転数-トルク直線
グレー:動作点全てはカバーしない回転数-トルク直線
一般に、加速プロセスの最後に極限動作点に達し、そこで、トルクと回転数は最大になります。
適正な回転数定数の決定
適正な巻線の決定する方法として、この用途に最適な巻線の回転数-トルク直線が、最大可能モータ電圧UMotでの極限動作点(MmaxMot , nmaxMot )の真上にあると想定しましょう。
このモータ・タイプの回転数/トルク勾配の平均値を想定し、理想的な無負荷回転数n0,theorを算出します。
注意: さらに安全側の解を求めるには、平均ではなく、最も非力な巻線、つまり最も大きな回転数/トルク勾配を使用します。したがって、n0,theor はより大きな値となります。
この理想的な無負荷回転数は、モータの入手可能な最大電圧UMotで実現できなければなりません。このことは、選定したモータの回転数定数kn が、モータ電圧とこの無負荷回転数との比よりも高くなければならないことを意味します。
ここまでは、負荷、ドライブ、モータ、コントローラ、電源の公差について検討していません。ここで、回転数定数が約20%高い巻線を選定するため、まだしていなかった検討をしなければなりません。
ドライブの制御にとって、安全性要因を確保することは非常に意味のあることです。そのためには、制御システムは極限動作点用に余力を持っておき、ドライブの公差が不適当なことが原因で性能の限界が下がるのを避けます。
これらを考慮した場合、回転数定数の比較的高い巻線の方が良いように思われますが、kn値の高いモータ巻線を導入することによって、全電圧範囲のメリットをフル活用できなくなります。トルク定数kM がより低くなるため、要求トルクを発生するために必要な電流が増加することになります。
8.3 電流の検証
最後のステップは、選定したモータ巻線に加えられる電流が、断続的動作と連続動作するために要求される出力トルクを発生できるかどうかの検証です。マクソンモータでは、発生トルクは、トルク定数kM によってモータ電流に比例するため、容易に算出できます。
この要求電流値の検証のために、モータ内で発生する損失も十分検討する必要があります。モータ内の損失は回転数にわずかに依存する無負荷電流I0 によって表されます。
しかし、入手可能な電流が十分かを見積もるため、この依存性は無視できます。
したがって選定判断基準としては、入手可能な電流Imot が、1周期毎に負荷トルクを発生するのに必要な電流値(モータ無負荷電流を含みます)よりも大きくなければならないことになります。
モータの入手可能な電流は電源とコントローラの性能によって特定されます。
次ページの例では、固定動作点が定電圧条件にて高精度に到達するための巻線選定プロセスが図示されています。11章の例では、周期的な動作をするサーボ用途に適正な巻線を決定する方法を説明します。