コラム:回転数/トルク勾配 Δn/ΔMの意味するもの
回転数-トルク直線の傾きまたは勾配は、モータ性能の尺度の一つです。傾きの小さいフラットな回転数-トルク直線は、負荷の増大した場合にも回転数がわずかに変化するだけの強力なモータであると言えます。比較的非力なモータは回転数-トルク直線の傾きが急であり、対応するように回転数/トルク勾配の値も高くなります。
回転数/トルク勾配はモータの定数であり、設計上の各種変数、つまり巻線と磁性回路の幾何学的な配置と寸法、その結果である空隙の磁束密度に基づいて一義的に決まります。巻線数と巻線抵抗も算出に必要ですが、空隙における銅の断面積の合計値が等しければ、巻線の影響に与える影響は相殺されてしまいます。このようにして、回転数/トルク勾配は機械的定数とみなされ、電気的性能を伴う個々の巻線ではなく、モータ・タイプにより特徴づけます。回転数/トルク勾配が同じであるモータは負荷のかかった状態では同じスピード応答を示します。比較的大型のモータの場合、モータ性能の比較計測方法として、定数k[Nm/W1/2]がよく利用されます。k値が高いほど、強力なモータです。回転数/トルク勾配はk値と同じ意味を持ちます。
その関係は
は計算上、より実践的な値です。
例えば回転数/トルク勾配が5rpm/mNmが意味するのは、一定の印加電圧の場合、要求トルクが10mNm増加すると回転数の低下が10・5=50rpmとなることです。
回転数/トルク勾配の決定
モータの回転数/トルク勾配は、モータのデータシートに記載されている無負荷回転数n0と停動トルクMH から簡単に算出することができます。図8.2に示すように、次の計算式が適用されます。
モータのデータシートが入手できない場合、回転数/トルク勾配はモータ電圧Uでの無負荷回転数n0 の実測値とモータ抵抗Rから算出できます。
したがって、モータの電気抵抗Rは、モータ軸固定時の電流実測値(起動電流IA)で決まります。