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The selection of high-precision microdrives

6.ステップ4 : ギアヘッドの選定(1)

本章の説明は、(マクソン)ギアヘッドを使用しない場合スキップすることができます。

図 6.1: 選定プロセスのステップ4は、ギアヘッドの選定に関するステップです図 6.1: 選定プロセスのステップ4は、ギアヘッドの選定に関するステップです
 

ギアヘッドの使用にあたって
高トルクかつ低スピード(一般的には1,000rpm以下)が要求される場合は常に、特にギアヘッドが使用されます。 ギアヘッドを使用する場合、要求されるモータはより小型に設計し、より高速で回転し、これに対応しより高い効率が発揮できます。負荷の慣性モーメントはギアヘッドを使用することによって減少し、このことが重負荷を効果的に加速させることにもつながります。
非常に小型のモータはトルクは小さいですが、主に高速回転することによって機械的な出力を発生します。したがって、ギアヘッドは利用可能なトルク範囲を拡大するために利用されます。
しかし、位置決め用途の場合には、バックラッシュがあっても、ギアヘッドが利用可能か否かを十分に検討する必要があります。特に低バックラッシュ型または、ゼロバックラッシュ型のギアヘッドを選定する必要があるかも知れません。

実例: コリメータドライブ用のギアヘッド
癌治療の放射線セラピーに使用されるコリメータの開口部は、台形リードネジによって駆動さします。腫瘍部に対し放射線を正確な方向、正確な焦点にあてるには、近接して位置する多くの開口部が必要であり、それぞれが別々に調節できる必要があります。ネジスクリュードライブの負荷データの代表例は、回転数500rpm以下、最大モータ直径8-10 mmでのトルク5mNm以下です。
このサイズのモータで、要求出力0.25 Wを実現することができますが、必要なトルクを発生する能力には全く至っていません。定格トルクの代表例は、0.5…0.75mNmです。2段階ギアヘッド(減速比約16:1)を使用しなければ、トルク要求を満たすことはできません。重要なことは、モータスピード(ここでは最高8,000rpm)が高くなってしまった場合にそれを処理する能力がギアヘッドに必要な点です。

計算式の下付き文字の意味
― ギアヘッド(出力)の負荷側の変数は、Lで表します。例えば、nLは、ギアヘッドの要求出力回転数を意味します。
― Gは、ギアヘッドの特性に割り当てます。例えば、McontGはギアヘッドの最大連続トルクを意味します。
― Mot、ギアヘッド入力(=モータ出力)の変数に割り当てます。 例えば、nMotは要求モータ回転数を意味します。

6.1 ギアヘッドの選定
ギアヘッドの選定において、動作範囲、例えば、回転数やトルクの限界値をまず検討する必要があります。

ギアヘッド方式の選定
ギアヘッドの適正な大きさは、ギアヘッド出力での要求トルクによって決まります。
ギアヘッド出力における実効負荷トルクMrmsLは、ギアヘッドの最大連続トルクMcontG より小さくなければなりません。

 MrmsL McontG

短時間の最大負荷トルクMmaxLは、ギアヘッドの断続最大トルクMmaxGより小さくなければなりません。

 MmaxL MmaxG

一般に、ここでの目的は、ギアヘッドの能力の少なくとも50%が利用できるように、またその結果、最大効率付近で動作できるようにするため、実現可能で最小のギアヘッドを選定することです。

0.5・McontG MrmsL McontG

しかし、ピークトルクが非常に高い場合、それに対応できる大型ギアヘッドを選定しなければなりません。しかし、このことはこの目的が必ずしも実現できるとは限らないことを意味します。
ギアヘッドへの断続的負荷の持続時間は1秒以下でなければならず、また、その時間の10%より短時間の運用としなければなりません。つまり、周期的な過負荷は、次の場合の後でなければ、繰り返すことができません。

 toff= 9 ・ton

これら制約条件を設ける目的は、歯の係合部の温度ピークが最大温度を超えないように、また、高温になることによって潤滑剤がブレーキの働きをすることがないようにすることです。

ギアヘッド減速比の選定
減速比iG を決定するために、モータの要求トルクを最小にするために望ましいのが可能な最大減速比であると仮定します。最大負荷回転数をnmaxL、最大推奨ギアヘッド入力回転数をnmaxGとすると、
最大許容減速比imax

ギアヘッド減速比

一般には、入手可能な減速比の内、上記減速比より小さいもの(直近)を選定します。